12.絶対に出ない

 

テレビ局からの出演依頼が、霊能者、壱心のもとにくる。

だが、出演はいつも断っている。

絶対に出ない。

何年も粘っていた某局もあったが、やはり出演しなかった。

 

有名になりたくて、とか、お金儲けでやっているのではなく、純粋に不幸な人達を救う。

それが霊能者の使命だと、口にしなくても行動で感じるのだ。

鑑定料が払えない人からは貰わず、逆にご飯を食べさせ、お土産まで持たせる。

気になる人には、電話を入れて、鑑定後もフォローする。

不幸な人生に幸がくるまで見届ける。

依頼人をいつも考えて、生きているのだ。

 

テレビには絶対に出ない。

理由は、取材拒否する美味しいお店に似ているかもしれない。

 

月のように、心の闇に光を当て続ける人がいる。

存在は、一部の人にしか見えないからこそ、魅力的なのだ。